短く結論を書いておきましょう。
個人用には安価なSFP+ですが、技術を知らない人間が回すビジネスになると SFP+では動作保証のための料金が極めて高額になる傾向があります。 このことから、ビジネス向けにはSFP+を敬遠するケースが増えている感触があります。 SFP+でないと駄目というのは状況に依存する論説であることに注意してください。 根拠としては、ネットワーク機器ベンダが10GBASE-Tのサポートを強化する傾向にあることが言えると思います。 ビジネス向けなら10GBASE-Tでも仕方がない、というのが政治的な情勢の現実と言えるでしょう。
いまどきのネットワークで100BASE-TX以下を使うことはほぼありません。 ですが電子工作の相手としてはときどき出てきます。 このような事例では、古い規格に対応したスイッチングハブが重宝されるアイテムになります。 2025年の事情から言えば、100BASE-TX以下は一般的なご家庭で検討されるような速度規格ではありません。
1000BASE-Tは2025年現在の一般的なご家庭で標準的に使われる規格だと言いたいのですが、 今どきは無線LANが幅を効かせているため、もしかしたら珍しい存在かもしれません。 1000BASE-Tは特にコメントが必要ないところまで普及した規格であると言えます。 2025年現在はHDDなどの速度を満たすに若干物足りない感じになってきましたので、 「予算をとことんケチりたい場合」のための規格になりつつあります。
2.5GBASE-Tはハードディスク系統が持つ100Mbyte/sec程度の速度感を満たす丁度よいポイントにあります。 近年の流行りとして、 NAS製品が2.5GBASE-Tに対応してきている点はメリットに挙げて良いでしょう。 2.5GBASE-Tの製品はちょうど欲しくなるスポットにある感じの規格になっています。 とはいえ、まだまだ国内市場向けにスイッチングハブが出回っていないのが難点であり、 今後の進展が期待される分野でもあります。
技術的には、10GBASE-Tの四半分の1というクロック速度で設計されています。 ホストコントローラはPCIe 2.0 x1 laneで実装されることが多いです。
NetBSDを含めたBSD系OS向けのホストコントローラとしてはIntel i225/226-Vあたりが良いでしょう。 Linux/Windows向けにはRealtek 8125BGに定評があり、安価に販売されています。 2.5GBASE-T規格向けのスイッチングハブはアンマネージドで足りることが多いです。 それでもSFP+規格のアップリンクポートを持つものを選びましょう。
2.5GBASE-Tと同時期に規格化されました。 規格として中途半端な感触があり、恐らく普及しないまま終わると思われます。 後述する10GBASE-Tのオマケで実装されることが多い存在です。
技術的には、10GBASE-Tの半分のクロック速度で設計されています。 ホストコントローラはPCIe 3.0 x1 laneで実装されます。
10GBASE-Tは、一般向けの論説において「ちょっと背伸びをしたい」初心者向けに勧められることの多い10GbE LAN規格です。 個人的な感想としては、よほどの理由がない限り、 RJ45ベースでの10GbE LAN構築をお勧めできません。 10GBASE-Tは1ポートあたりだいたい2〜3ワットは消費するという大飯喰らいであることが問題の根源です。 ご家庭用に手頃な規模となる8ポートのスイッチングハブでさえ、ファンレスの製品を探すのは相当に難しいでしょう。 RJ45によるLANは5GBASE-Tないしは2.5GBASE-Tが精一杯であるというのが2025年までの現状です。 これを打破するデバイスが発売されるかどうかはわかりません。
SFP+ではなく10GBASE-Tを使わざるを得ない用途は、確実に存在します。 それはPower over Ethernetが欲しい場合です。 ただし無線LANアクセスポイントなどは2.5GBASE-Tで済ませられることが多く、 10GBASE-Tそのものがないといけないという事例は稀だと思います。
最新のホストコントローラはPCIe 4.0 x1 laneで実装されます。 過去にはPCIe 2.0 x4 laneだったりPCIe 2.0 x8 laneで実装されたりしていました。
SFP+と10GBASE-Tとの違いは、 SFP+ではケーブルに光ケーブル(10GBASE-SR)やTwinax同軸ケーブル(10GSFP+CU)を使うことです。 SFP+ポートはそれ自体ではケーブルをサポートするものではなく、 SFP+トランシーバというアタッチメントを介在させるところに特徴があります。
SFP+では、トランシーバを取り替えることで光ファイバ用規格である10GBASE-SRや、 ツイストペア用規格である10GBASE-Tを含めて、様々なケーブル規格に対応できます。 なぜ10GbE LANの「普通の世界」では光ケーブルを使うのかと言えば、 それは光ケーブル技術はツイストペア銅線技術に比較して低い電力で駆動できるから、というのが理由です。 光ケーブルの系統はトランシーバで1ポートあたりだいたい0.7ワット消費します。 トランシーバは両端で使いますので2倍して1.4ワット。 もしRJ45のツイストペア銅線規格であれば1ポートあたり2~3Wほど消費しますので、両端で4~6Wにもなります。 新しい半導体を使えば低減される傾向が多いとは言え、10GBASE-Tはまだまだ10GBASE-SRの敵ではありません。 SFP+に直接的に銅線を繋ぐダイレクトアタッチケーブル(DAC)を使えば10GBASE-SRよりもさらに安価に済ませることができ、 ダイレクトアタッチにおいては信号経路にアクティブな部品を持たないため、 電力消費もほとんどありません。
一般的な初心者向け論説ではSFP+はサーバ類を接続するのに使うものとされます。 SFP+規格を普通のパソコンを繋ぐために使ってもまったく問題ありません。 もともとSFP+はデータセンタで普及した規格です。 大人の事情がいろいろあって、データセンタ用途ではSFP+よりも10GBASE-Tに押されつつあります。 今後SFP+は家庭用の規格として見直されることになるでしょう。
マルチポートブリッジ、つまりスイッチングハブを選択するときの注意点は、 まずはファンレス型の製品を選ぶことです。 寝床に設置して空冷ファンの音が煩いのでは目も当てられません。 また、空冷ファンを搭載した製品はファンの消耗で製品寿命が決まる傾向にあるため、 評価としてはどうしても短命になります。 それなりに長期間使いたい設備の場合はファンレス型である必要があると言えるでしょう。
1000BASE-Tや2.5GBASE-Tの場合は、 それを管理するルータ側にポート数があることが期待できるため、 初期導入としてはアンマネージド型で問題ありません。 可能であれば最初の1台はマネージド型のものをお勧めします。 しかし絶対条件ではありません。
10GbE LANを構築する場合において最初に買うスイッチングハブはVLANを設定できるマネージド型の選択が推奨されます。 これは10GbE対応ルータは接続ポート数が少ないものしかないことが影響しています。 ジャンボフレームを通すセグメントと、無線LANを通すセグメントとはひとつのセグメントに同居ができません。 これを切り分けるためには、ルータにもスイッチングハブにもタグVLAN機能が必須となります。 ジャンボフレームを一切使わないのであれば特に言うことはありませんが、 実験程度でも試してみたくなるのが人情というものです。